もしかして 泥棒?

7月の夏休みまで間もないある日・・・
その日は 朝から忙しく 何人もの人が 出入りする日でもあった。
父さんが朝から出かけて留守で 母さんが 一人でバタバタと やりくりしていた。

尋ね人があり その人と 食堂で話をした。
とても蒸し暑い日で 食堂にクーラーをかけ その中で話をしていた。
ふと 気がつくと 時々どこかで ガタガタと 変な物音がする。

(ああぁ・・・他の部屋は 網戸にしてあるから  風があるのかしら・・・?)時々 そんなことを思いながらも 一人で留守番をしている事に なんとなく不安感を感じる日であった。

その尋ね人が帰り 父さんが帰ってきた時だ・・・
「あのさぁ・・・どうして食堂に泥が落ちてるの?」

びっくりして食堂に行ってみると さっきまでいた食堂の床に 見覚えのない赤土がボロボロところがっている・・・
おまけに 掃き出しになっているサッシの網戸が2枚も開けっ放しになり まるでそこから 泥靴で床に上がったような気配なのだ・・・

「お母さん 網戸開けっ放しにしたの?」と 父さん。
「するわけないじゃない!でも どうして?さっきまで ここにいて 暑いから網戸にして風通しして 奥に行ったのに・・・だれがあけたんだろう?」
「 もしかして さっき来た業者さんが いつもと違う場所に(食堂に)荷物を下ろそうとして 置いたときに土がついていたのかな・・・それで まずいと思い またいつもの入り口から搬入したのかな・・・?」
すぐに 業者さんに電話したが そんな覚えはないという・・・

もしかして・・・もしかして・・・?

2人の頭には 「もしかしたら泥棒・・・?」という考えが どんどん大きくなってきた。
「テレビとかでさぁ 泥棒は逃げやすいように 逃げ口を2箇所作って置くって よくやってるよね」
「ああ・・・それで網戸2枚 あけておいたのかもしれない」

「もしかして まだ中にいるとしたら どこにいるの?うちの方は私がいたから 誰もこなかったし。居るとしたら ペンションの方に隠れてるってこと?こ・こわ〜い!」

「お母さん 警察に電話したほうがいいんじゃない?」と 父さん。
「えーっつ!なんて言うの?」
「そりゃあ 泥棒が入ったというしかないだろ〜」
母さんは おそるおそる受話器をにぎり 警察に電話する・・・

「ハイ!黒磯警察です。どうかしましたか?」だったかな・・・電話の向こうで警察の交換の女性が言う。
「あ・あの〜ぅ。もしかしたら 泥棒に入られちゃったかなっていう感じなんですが・・・」母さんは 少し消極的に言った。
以後はそのときのやり取りだ。

交換     「では 係りに代わりますのでお話ください。」
おまわりさん「もしもし 泥棒はいっちゃったの?」
母さん    「あの・・・閉めておいたはずの網戸が開けっ放しになっていて そこに赤土が床の上にこぼれているんです。この季節 泥棒ではなくて 蜂とかツバメが土を運んでくるってことありますか?」
おまわりさん「う〜ん?蜂とかツバメも そういうこともあるけどね・・・でも 網戸は開けないだろうから あとで行けたら 様子を見に行きますよ。」

あとで 来てくれるって・・・。でも それまで もし泥棒さんが 部屋に隠れていたら・・・

2人は 背筋が凍る思いで 仕方なく ペンションの部屋を 見て歩くことにした。
「もし 泥棒が隠れていて 急に飛び出してきたらどうする?」
母さんが言った時 父さんの手には もうしっかり金づちが握られていた。 そして母さんにはゴルフクラブを持つようにと用意していた。
「お父さん そんな短い金づちで わたしはゴルフクラブ?反対なんじゃない?」
「バカ!金づちの方が もし襲われたとき とっさに対抗できるんだ!ゴルフクラブは長くてあたらないんだぞ!」
「俺が戦うから おまえはドアを開けろ。」
「え〜っつ!私がドア開けるの?いやだー。あけたときに襲ってきたらどうするの?」
「襲ってきたら 俺が金づちでやるんだ。いいから開けろ!」

母さんが恐る恐る 部屋のドアをそーっと開ける 。
そして2人でそーっと中をのぞく。
し〜んとしている。
それから中に入り 今度は クローゼットのドアの前を母さんがすばやく通り過ぎ、向こう側からパッとあける。
父さんは胸の位置で 金づちを握りしめ 壁に背中をつけてひそんでいて さっと中を見る。
次はトイレの中を 同じ方法で 見る。

この方法で1部屋1部屋 2人はまるで探偵よろしく 次々としらみつぶしに見ていった。

ペンションというのはこういうとき面倒なものだ。
部屋には金目のものは何もないが 隠れる場所はいっぱいある。
もし 昼間隠れていて 夜になって活動し始めたとしたら・・・お客様の部屋に押し入ったり オーナールームが留守のとき 家捜しに着たり・・・などなど 考えると限がない。

全部の部屋を見たが 誰も隠れては居なかった・・・
もう逃げたあとだったのか、入ろうとしたが未遂で終わったのか・・・

やっぱり 泥棒だなんて 私たちの騒ぎすぎと思われているのかな・・・?そう考えていたら 1時間くらいしたら おまわりさんと鑑識の人が 来てくれた。
それが、まるで刑事ドラマに出てくるようなトリオで 美人の若い女刑事さんと クール感じのな30代くらいのおまわりさん そして大柄で面白そうな鑑識のお兄さん。
パチパチと 手馴れた様子で写真を撮る鑑識さん。床にこぼれた土を指でつまんで どこの土かと考える 美人刑事さんと クールなおまわりさん。3人は 床に頭を擦り付けるようにして 泥棒の足跡を 見つけているようだ。

「おかあさん。最後にこの網戸を閉めたのは何時ごろですか?その時は この土はなかったですか?」
「もちろん きれいでしたよ!あれば 網戸閉めるとき気がつくはずだもん・・・」母さんは 必死で 状況を思い出しを説明した。

・・・・・・・中略・・・・・・・

結局 足跡らしいものはないので 泥棒の入った形跡はないということになった。

「え〜っつ!じゃあ 私が 大騒ぎしただけ〜?」

結論はこうだ。客が帰って 母さんが網戸にした際 レースのカーテン越しに締めたため 網戸のあるほうにサッシを開けてしまい 結局網戸を開けた状態にしてしまった。その時 サッシの上にあった 土蜂の巣が 落ちてきた。それが 赤土でできていたので 泥棒の靴についていた土と 勘違いしたらしいのだった。 

それも、その赤土を手にとって サッシに当てて「ああ・・・ここにピッタリだね。ここから落ちたんだね。」なんて 鑑識の人みたいに 推理して見せたのは 父さんだった。

「すっつ、すみませ〜ん・・・」
母さんは 太ったからだを できるだけ小さくして しょんぼりして言った。
「お母さん よかったですね。泥棒じゃなくって。女の人は 気になりだしたら 考えちゃ居ますものね 。ハッキリわかってよかったじゃないですか。」美人刑事さんが 慰めてくれ、
「それにしても やっぱり お父さんはすばらしいですね。冷静に 蜂の巣だって 当てましたからね・・・(^=^)」
「まあ・・・ヘヘヘェ」父さんは 美人刑事さんに誉められてうれしそう。

(まったく!だったら はじめから 推理してよ!警察に電話しろって言ったのは お父さんのくせに!!!)

「まっ、よかったですね。泥棒じゃなかったし、それよりおかあさん!退屈な日常生活に 適当に刺激があってよかったんじゃないですか?」

クールなおまわりさんが そう言って この事件は幕を引いた。

言っておきますけど 私は 毎日退屈なんかしていませんよ !
毎日 ペンションのことで 頭がいっぱいです!

っと言い切りたいけど  まっついいか!
お蔭様で 美人の刑事さんと クールなおまわりさんと かっこいい鑑識のお兄さんと 知り合いに慣れたし 
結局 いっぱい刺激のある 1日になってしまったから・・・


2005.6.17記入

 

 

 

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