親切のつもりが・・・

先日 一人で電車に乗って出かけました。

午後の電車で 黒磯を出るときには ガラガラの電車が 南に向かうにつれ だんだん混んできました。

どの座席もいっぱいになったころ 2歳くらいの女の子を連れた 若いママが電車に乗り込んできました。

女の子は 座席に座りたそうで 愚図っています。

「席が空いたら座らせてあげるからね。そしたら お菓子も上げるから もう少しがまんしてね」と ちょっと 周りの人に聞こえよがしに ママは言い聞かせています。

私が 譲ってあげようかなと 考えていたら、ちょうどすぐそばの青年が 「おりますから」と 席を譲ってくれました。

先を越されてしまいました。(いまどき 親切な若者がいるんだな〜と ほほえましく見ていました)

席を譲ってもらった女の子は 座ったとたんに ぐっすりzzzzz

「もうすぐ降りるから寝ないでよ〜」と ママは 女の子をゆすります。

でも そんなことは お構いなし。女の子は ぐっすりです。

見れば 若いママは 大きな荷物を2つと 小さな荷物を 3つも持っています。

それを 持ちやすくするためか 電車の狭い床に置いて 荷物の入れ替えをしてまとめています。

「あららら・・・ どうするつもりなのかしら?」と見ていると 私の降りる駅が近いという アナウンスが入りました。

「○○線に お乗換えの方は 降りたホームから 階段を上り 降りたホームの○○線から4分後に出発します」というではありませんか。

「あらあら 大変だ 4分で駅の階段を上り下りするのは 相当頑張らなければ・・・」

そう思って 私が荷物を持って 降りる準備をしていたら

さっきの 若いママも 5個の荷物を 両手で持って どうやら降りる準備をしています。

「あらら・・・女の子はどうするつもりだろう・・・?」と 見ていると

ママは 器用に背中を寝ている女の子の上にのけぞって 女の子は フラフラと眠りながら ママの背中にしがみつきました。

ママは 両手の大荷物をテコにするように よいしょと背中の子を背負い 腰を曲げ 出口に向かって歩き出しました。

「どうするつもりだろう・・・この駅で 降りるのかな?おじーちゃんとか誰かが 駅まで迎えに来ているのかな?そうでなかったら あの子を手ぶらで背負って 階段を・・・まさか!のぼるつもり?」

先ほどの青年の勇気ある親切に 心を打たれていた私は 「ここで株をあげなきゃ!」(^_^;)と つい思ってしまい、

「お母さん!ここで降りるんですか?どこへ行くの?」と 聞いてしまいました。

「この駅で降りるの?それとも 乗り換えるの?」

「乗り換えるんです」「でも 大丈夫です」と、ママは ほかの人に迷惑をかけるつもりはありません。というように きっぱり言いました。

「何線に乗り換えなの?お子さん寝ちゃっているから 大変よ!あぶないよ!」と 私は つい聞いてしまいました。

まだ電車は 止まっていないので 思えば 周りの人たちみんなが 2人のやり取りに耳を傾けていたかもしれません・・・

「○○線に乗るんです。頑張りますから大丈夫です。」ママは 恥ずかしさからか きっぱりしています。

「え〜!○○線なの?じゃあ 階段上り下りしなきゃならないし 4分しか時間がないから 大変よ!私もちょうど○○線だから その大きな荷物持ってあげるわ!!!」

「え・・・大丈夫です」ママは そう言っていましたが 危ないから お子さん眠っているから」と 私は 少し無理やり 大きな荷物を2つ預かりました。

駅につき ドアが開き 私たちを含めた乗客は 一斉に飛び出し 階段めがけて 走り出しました。

「気を付けてね!荷物は大丈夫だから」「4分だからって 無理しないでね!」「ママ若いのにえらいね〜」など 私は荷物を持ちながら 階段を上るママの後ろから 声をかけながら登った。

女の子のおしりが (眠っている重さで)だんだんずり落ちてきているようで 私は 階段をのぼりながら 手を伸ばして支えてやったり 声をかけたり 荷物を持ったり がんばった・・・頑張った・・・がんばった・・・

 

た、た、た、 そのうち階段の途中で  私のほうが 重い荷物と急いで登る勢いで のどはカラカラ 足がもつれ 助けたほうのつもりの私が 階段5段くらい遅れてきた・・・

「大丈夫ですか?」 今度は 反対に ママのほうが 心配になって振り向きながら 登っている。

心配して振り向いた足元を見ると サンタクロースみたいなフワフワのブーツの紐が 片方ほどけてしまい 歩くたびにボンボンが ブ〜ランブ〜ランしているではないか。

「お母さん!私は大丈夫。あとから行くから !それより 紐がほどけているから気を付けて!頑張って!」

親切のつもりで声をかけたつもりが いつの間にか私のほうが 心配をかけているようだ・・・

重い荷物を持ち 一気に階段を上ったせいで のどはカラカラ 心臓バクバクの私。

まったく いつの間に こんな おば〜さんになってしまったのだろう(^_^;)

階段を 一番後ろのほうから やっとの思いで駆け降りた私は ママよりかろうじて2メートルくらい先に電車に乗り込み 座席を一人分確保し ここに寝せて!」と言って

女の子を寝せるのを見届け 荷物を返して その場を離れた。

「すみませんでした」と ママは言ってくれたけど なんだか 私のほうが重荷になってしまったようで

かえって 心配をかけてしまったようだ。

もしかしたら ママは 荷物を奪われるのではないかと 心配だったかも・・・

 

電車を降りてからも ママのブーツの紐が 足元でぐるぐる回る様子と 私ののどの痛みだけが脳裏から離れず くすくす笑ってしまった。

老婆心という言葉はあるけれど どこまで 親切と感じてもらえるかどうかと 改めて考えてしまう出来事でした(*_*)

2011.2.6記

 

 

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